オムニチャネルの意味とは?他のチャネルとの違いや効果、事例を解説
オムニチャネルは小売業界で導入されている販売戦略で、昨今のマーケティングには欠かせない手法です。そこで本記事では、オムニチャネルについて調べている方のために、基本的な意味や他のチャネルとの違い、効果や事例を解説します。
目次
オムニチャネルの意味とは?
オムニチャネルとは、複数の媒体を使用して企業と顧客の接点を作り、使用した媒体同士のデータを統合して顧客情報を一括管理するマーケティング戦略です。ここでは基本的な語源や、顧客接点を作るための媒体を解説します。
オムニチャネルの語源
オムニとは、ラテン語で「すべて」を意味します。また、チャネルは、販売側と顧客側を繋げる場所や媒体を指す意味です。直接商品を購入するECサイトに限らず、情報をやりとりするだけのメルマガやSNSなどの媒体もオムニチャネルに含まれます。
オムニチャネルに含まれる媒体の種類
オムニチャネルに含まれる媒体は以下の通りです。
●店舗
●ECサイト
●アプリ
●LINE
●SNS(Twitter・Instagram・Facebook・YouTube)
●メールマガジン
●テレビ・ラジオ・Webなどの広告
オムニチャネルとO2Oとの違い
オムニチャネルは、複数の場所や媒体を連動させて全体の相互作用を試みる戦略です。一方でO2Oは、Online to Offlineの略称で、オンライン上で接点を獲得した顧客を実店舗(オフライン)に誘導する戦略のことをいいます。
そのためO2Oはオムニチャネルとまったく異なる戦略ではなく、オムニチャネルの概念に含まれる要素の1つです。
O2Oの施策として挙げられる例として、実店舗での購入に使えるクーポンをオンラインで配布し、実店舗での購入時に利用してもらうケースがあります。他にも位置情報で特定の店舗に近づいた際に、その店舗で実施しているキャンペーンを通知するケースもO2Oの施策といえます。
オムニチャネルと他の顧客接点拡大戦略との違い
オムニチャネルは2011年頃から浸透し始めた戦略です。マーケティング戦略には種類があるため、他の戦略を立てている企業もあるでしょう。ここでは、他の戦略の特徴とオムニチャネルと何が違うのかを解説します。
シングルチャネル|顧客接点が1つのみの戦略
シングルチャネルとは、実店舗のみで顧客と接点を作る戦略です。インターネットが現在ほど普及していなかった1999年頃まで、顧客との接点は実店舗のみであることがほとんどでした。現代では、ECサイトのみで販売網を展開している企業やブランドもシングルチャネルに含まれます。
ECサイトのみのシングルチャネルのメリットは、実店舗をオープンするよりも少ない投資額で物販ができることです。ただし顧客接点が1つに限られるため、オムニチャネルに比べて情報発信や販売機会を広げることは困難です。
クロスチャネル|チャネル同士を連携される戦略
クロスチャネルとは、複数のチャネルを連携させて1人の顧客データをまとめられる状態の戦略です。2006年〜2010年頃から普及した、マルチチャネルを発展させた戦略です。チャネル同士の情報を連携させれば、最適な場所に在庫を集められたり、オンライン・オフラインの顧客データを一元管理できたりします。
オムニチャネルと似た販売戦略ですが、オムニチャネルの方がすべての媒体の連動がスムーズで、売上・在庫管理・顧客情報・情報発信などすべての情報に一貫性を持たせることが可能です。
オムニチャネルが注目される理由はスマートフォンの普及
オムニチャネルが有効なマーケティング戦略として注目される理由は、スマートフォンが普及し、購買につながるチャネルが増えたことです。たとえばアパレル企業では、LINEで新商品発売の通知をして消費者の興味を惹き、ECサイトで商品詳細や販売店舗を確認できます。また、SNSを確認すればライブ配信で販売員による商品紹介が見られたり、その場で質問できたりします。
スマートフォンが普及したことで、消費者が1つの端末で複数媒体の情報を簡単に集められるように変化しました。複数の媒体を通して企業とコミュニケーションを取れる機会が増えたため、オムニチャネルが注目され、取り入れる企業が増えているのです。
オムニチャネルを活用して期待できる効果4つ
オムニチャネルが注目されても、具体的な効果が分からなければ自社での導入を判断することは難しいでしょう。そこでここではオムニチャネル化に期待できる効果を4つ解説します。
①顧客の囲い込みができる
オムニチャネルで複数の媒体を連携させれば、顧客の囲い込みができる可能性があります。たとえば、実店舗でしか接点が無かった顧客に対して、店舗で貯めたポイントをECサイトに連携させたりECサイトで使えるクーポンを配布したりした場合、ECサイトも利用されていくでしょう。
今まで他社のECサイトを使用していた場合は自社のECサイトの利用に移行させることで、顧客の囲い込みにつなげられる可能性があるのです。
②顧客の満足度が高められる
オムニチャネルを活用すれば、顧客満足度を高められる可能性があります。今までは実店舗でしか得られなかった商品情報、もしくはそれ以上の情報をさまざまな媒体から入手できるためです。
たとえばアパレルでは、実店舗で実物を確認しなくても、ECサイトで着丈や素材を確認し、SNSで自分の身長と同じ程度の販売員が着用している映像を視聴できます。口コミサイトでは実際に購入した方の実体験も確認可能です。多角的な視点で検討すれば期待外れの購入を避けられるため、購入した商品の満足度が高まるでしょう。
③販売機会を逃さずに済む
オムニチャネルを活用すれば販売機会を逃さず売上を上げられる可能性があります。たとえば、顧客が求める商品の在庫が実店舗になかった場合、オムニチャネルであればその場で他の店舗の在庫を探して取り寄せられます。もしくは顧客が自ら在庫のある店舗を調べて購入することも可能です。
また、ECサイトでお気に入りに登録されている商品の在庫が1つになった時点で、顧客に通知メールが届くケースもあります。顧客は売り切れる前に購入でき、企業は販売機会を逃さずに済むのです。
④顧客情報の入手・分析・複数データの統合ができる
オムニチャネルは、実店舗、ECサイト、SNSなどさまざまな媒体で得られた顧客情報を一元管理できる販売戦略です。
そのため、売れた商品と顧客情報を組み合わせた分析はもちろん、SNSの反応やキャンペーンの参加状況から趣味嗜好の分析も可能です。分析結果をもとにより効果的な販売戦略を検討し、次の新商品のマーケティング戦略に活かすことができます。
オムニチャネルを導入している企業事例2選
オムニチャネルを導入する前に、他の企業が行った具体的な事例を知っていると、自社の戦略のヒントになるでしょう。ここでは身近な企業の2社について解説します。
①【アパレル】ユニクロ|株式会社ファーストリテイリング
株式会社ファーストリテーリングが運営するユニクロでは、オムニチャネルを活用してさまざまなチャネルから顧客を獲得しています。また、専用アプリではAIチャットボットを導入し、今まで以上に顧客の声を集めました。
集めた顧客の声を第一にしながら、オムニチャネルで得られた情報を分析し、生産や企画に活かして、売上や店舗を拡大させています。
実店舗以外では、以下のような戦略で顧客との接点をつくり出しています。
●LINEでのチラシ配布
●ECサイトから実店舗の在庫確認や実店舗受け取り依頼
●アプリ会員限定価格の設定
●アプリ内のAI接客サービス
●SNSでの新着商品紹介
【参考資料】
ユニクロのビジネスモデル|株式会社 ファーストリテイリング
②【日用雑貨】無印良品|株式会社良品計画
株式会社良品計画が運営する無印良品では、アプリケーション「MUJI passport」を活用して実店舗とECサイトをつなぎ、顧客接点に一貫性を持たせて成果を上げています。 無印良品のオムニチャネルを成功させた要因のひとつとして挙げられるものが「マイル」と呼ばれる無印独自のポイントシステムです。
マイルは、チャネルを問わず商品を購入することで溜まることはもちろん、商品を購入しなくても実店舗に立ち寄るだけでも貯められます。貯めたマイルはポイントに交換でき、ショッピングポイントとして利用できる仕組みです。
ほかにも「MUJI passport」では以下のような戦略で顧客接点を創り出しています
●意見や要望を投稿することでマイルが貯まる
●会員限定のクーポンや誕生日特典のプレゼントがある
●店頭の在庫確認やECサイト注文の店頭受け取りができる
【参考資料】
MUJI passport|株式会社良品計画
まとめ
オムニチャネルは実店舗の他に多様な媒体を駆使して顧客接点を拡大させるマーケティング戦略です。複数のデータを統合させて分析すれば、企業の売上に限らず顧客の満足度も高められる可能性があります。エムズコーポレーションでは、さまざまな媒体の活用を提案しています。オムニチャネルの導入でお困りの際はお気軽にお問い合わせください。