ユニバーサルデザインの考え方で、「伝わる広告」を作る
「ユニバーサルデザイン」という言葉をご存知ですか?ユニバーサルデザインとは、あらゆる利用者にとって使いやすいよう、製品や環境を設計することを指します。建物や製品のデザインに反映させるものというイメージがあるかもしれませんが、広告デザインを考える上でも抑えておきたい考え方です。
ユニバーサルデザインの考え方を取り入れた広告デザインは、年齢性別を問わず多くの人にとって「伝わりやすい」デザインだからです。
ここでは、ユニバーサルデザインの基本的な考え方と、デザインで意識しておくべきことを解説します。
目次
ユニバーサルデザインの7原則
ユニバーサルデザインを提唱したロン・メイスさんたちのグループは、ユニバーサルデザインの基本的な原則を以下の7つにまとめています。
1:誰でも公平に利用できること 2:使う上で自由度が高く柔軟性があること 3:使い方が簡単で、直感的に分かること 4:必要な情報がすぐ理解でき分かりやすいこと 5:うっかりミスや危険につながらないデザインであること 6:自然な姿勢でも少ない力でも楽に使用できること 7:アクセスしやすく操作しやすい寸法とスペースになっていること
この中で、広告デザインに取り入れる観点として重要な1、3、4の3点について掘り下げて見ていきましょう。
1:誰でも公平に利用できること
どのような立場の人にとっても、公平で使いやすいデザインが求められます。例えば、色覚異常の人にも見やすい配色にしたり、グローバル対応を視野に入れて多言語対応するということも公平性を考える上で大切だと言えるでしょう。
3:使い方が簡単で、直感的に分かること
シンプルで分かりやすいデザインというのが、ユニバーサルデザインの原則的な考え方です。大きくて見やすいデザイン、不必要に複雑ではないデザイン、分かりやすい言い回し、直感的に把握しやすいような情報配置などが求められます。
4:必要な情報がすぐ理解でき分かりやすいこと
どのような状況であっても、必要な情報がしっかり伝わることを想定して作られていることが必要です。重要な情報は文字の大きさを変えたり色を変えたりすると、読みやすくなります。
いずれも当たり前のような考え方ですが、広告デザインを考えているとつい忘れてしまいがちです。広告の目的として、他社のものよりも目立つデザインであることは大切かもしれませんが、伝えたいことが伝わらなければ意味はありません。広告デザインを考える際には、ユニバーサルデザインであるかどうかという視点も持ってみてください。
伝わる広告デザインのために意識したいこと
広告には独自性も大事ですが、見やすく、分かりやすく、目立つデザインであることはどのようなターゲットにも当てはまる観点です。より多くの人が認識しやすいデザインであれば、それだけアピール性が高い広告になるとも言えます。
では、伝わる広告デザインにするためには、具体的にどのような点に気をつければ良いのでしょうか。すぐに取り入れられるちょっとした工夫をご紹介します。
文字の大きさや行間を調整する
限られたスペースに多くの情報を詰め込もうと思い、文字サイズを小さくしたり、行間を詰めたりしすぎるのはNGです。具体的には、A4サイズであれば12pt以上の文字サイズが望ましいです。また、テキストエリアのサイズが同じであれば、文字を大きくするよりも行間・字間に余白をもたせたほうが読みやすくなります。1.5倍~1.75倍程度の行間は確保するようにしましょう。
読みやすいフォントを選ぶ
フォントによっても、読みやすさは大きく変わります。一般的には、明朝体よりもゴシック体のほうが可読性が高いです(明朝体は細い部分が見えにくく、線の太さの違いが刺激となる人もいるからです)。ユニバーサルデザインという観点からフォントを選ぶと、誰にとっても見やすく読みやすい「ユニバーサルデザインフォント(UDフォント)」が多数開発されています。ユニバーサルデザインフォントは、濁点や半濁点が判別しやすく、似た形の英数の誤読が少ないように工夫されています。有料のものだけでなく、無料頒布されているものもあるので、活用してみてはいかがでしょうか。
色使いに注意する
色の見え方が違う色覚を持っている人もいます。カラフルな色をもちいることはデザインのバリエーションを広げるためにも使えますが、それだけに頼ると一部の人に伝わりにくいデザインとなってしまいます。作成したデザインを色覚シミュレーションツールで確認すると、改善すべき問題が見えてくるはずです。ツールがない場合でも、「色の違いは明度の違い(色の濃さの違い)でつける」「塗りつぶしではなく、枠線やハッチング(斜線)を併用する」「形の違いを利用する」という点を意識すれば、多くの人にとって分かりやすいデザインになるはずです。
広告デザインにユニバーサルデザインの考え方を取り入れて
広告の内容を多くの人に正しく伝えるためにも、「見やすい」「分かりやすい」広告を作ることが大切です。今回ご紹介したような考え方を取り入れて、多くの人に伝わりやすい広告デザインを心がけましょう。