災害支援とマーケティング

毎年のように大規模な災害が起き、その度にさまざまな企業が被災地支援を行っています。地震や豪雨により大きな被害に見舞われたとき、企業としてはどう対応すべきなのでしょうか。
マーケティング担当者として特に気になるのが、「通常業務やマーケティング活動を自粛すべきか」ということかもしれません。今回は、災害が起こったときの支援とマーケティングについて考えていきます。
目次
災害後は、マーケティングを自粛すべき?
災害が起きた時、企業としてはどう対応するのが望ましいでしょうか。マーケティングの視点から見てみます。
過度な自粛は必要ない。経済を回すことが復興支援
2011年に日本を襲った東日本大震災。あまりに大きな被害のため、全国的に「不謹慎ムード」が高まり、テレビCMを自粛する企業が相次ぎました。その結果、公共広告機構のCMが大量に放送されることになり、異様な状況に。
しかし、企業がマーケティング活動を自粛すると、経済が停滞し、復興が思うように進みません。そのことから、現在では「被災地に寄り添う気持ちを持ちながら、募金など積極的に取り組み、被害のない地域はいつもどおりの経済活動を行う」というのが一般的な考え方になっています。
実際、ソーシャルメディア上でも、東日本大震災のときは「企業のマーケティングが不謹慎」という論調が多く見られましたが、今では震災直後でもマーケティング活動について寛容な意見が多くなっています。
インターネット広告は、適切な配慮を
経済活動を続けるということは大事ですが、マーケティング活動の中でもソーシャルメディアとの付き合い方は改めて考えたいものです。
例えば、Twitter広告。多くの人の興味を引き、ファンを増やすためにユニークな内容に特化している企業も多いと思います。しかし、災害関連の深刻なやり取りがされている中、こういった広告が表示されると、消費者としてはネガティブな印象を持ってしまいます。
Twitter広告を始めとするWeb広告は、エリアごとのターゲティングが可能です。社会的に大きな事件や災害が生じた場合は、広告が不謹慎な形で表示されないよう設定を見直しましょう。広告の内容を調整する、広告出稿を停止するというのも一つの判断だと思います。
企業による災害支援の方法
災害が起きた時、直接被害を受けていない場合は過度な自粛をする必要はないということはご理解いただけたと思います。通常の企業活動を行い、経済を回すことが一番の復興支援にも繋がります。
昨今は、企業のCSR活動(社会的責任を果たすための活動)が重要視されています。企業だからこそできる「災害支援」を通じて、社会的な役割も果たしていきたいですね。近被災地から遠い地域に住んでいる人でも、「被災地のためになにかしたい」と考えています。そういった消費者の心に沿う活動を提案したり、企業が実行したりすることで、被災者支援にもなり、企業としてのイメージもアップします。
いくつか具体例をご紹介します。
寄付金・義援金での支援
売上の一部を金銭的な支援に回すというのは、一番すぐに実行できる方法です。支援先としては、赤十字社、自治体、共同募金などが一般的です。
ちなみに、寄付金・義援金・支援金の違いは以下の通り。
・寄付金:被災地支援のために支払われるお金の総称
・義援金:被災者に公平に分配され、直接的に支援できる。ボランティア団体や行政の復興事業には使われない。均等に分配するため、手元に届くまでには時間がかかる。
・支援金:被災地で活動を行う機関を支援する。すぐに活動資金となり、救命・復旧活動に使われる。
業種やサービスに関連性のある支援先を選ぶというのもいいでしょう。また、「売上の一部を支援する」という方向でお客さんを巻き込むという方法も考えられます。
物資提供による支援
メーカーや小売業の企業であれば、物資提供を申し出ることで直接被災地を支援できます。生活用品はもちろん、避難生活の長期化を視野に入れ、遊具や絵本、文具等の支援も喜ばれるはずです。
人材提供による支援
被災地が比較的近くにある場合は、ボランティア有志を募って活動を行うことで、直接的に復興を支援できます。
こういった支援活動は、企業の経営活動的にはマイナスかもしれません。しかし、いざという時に支援を行う助け合いの気持ちは大切にしたいですし、こういった活動を続けることが長期的に見ると経営にもいい影響を与えるのではと思います。
復興支援で企業としての社会的責任を果たそう
今回は、災害時に企業はどうすればいいかについて、マーケティングや復興支援の観点から考えました。災害が起きたからと言ってマーケティングを過剰に抑制するより、被災地に寄り添いながら、適切な経済活動を続けることが企業に求められていることです。今は、企業のCSR活動も重要視されています。できる範囲で被災地に協力し、それをホームページ等で公表することで、イメージアップにも繋がりますし、社会の一員としての役割も果たすことができるのではないでしょうか。